2/18 石見那賀郡近代建築めぐり&今福線の遺構を辿る
江津駅前で昼食を食べた後は都野津会館へ。昭和12年4月に竣工した旧那賀郡都野津町役場で、現在も公民館として現役です。都野津町は昭和29年に江津町など那賀郡8町村と合併して江津市となりました。
13:32 山陰本線 下府駅へ。列車で日没後に来たことはありますが、明るい時間に来るのは初めてです。夜に来るとイルミネーションされていましたが、昼はこんな感じなんですね。駅舎内では地元の人たちが集会を開いていました。浜田市郊外にある駅で、戦前は当駅から石見今福を経て可部線に繋ぎ、広島とを結ぶ今福線という路線が計画されていました。当駅から石見今福までは戦前にほとんど完成していたものの、戦争で中断し、その後の水害で路盤が崩壊したことから実際に開通することなく放棄されています。これからその今福線の遺構を巡っていきます。
築堤上にあるホームは相対式2面2線ですが、今福線の分岐用に3番線を設置できるよう用地が確保されています。結局ホームとして完成することも無かったのか今ではすっかり自然に還っています。
ガソリンを入れ、宇野方面へと県道を走っていると突然道路脇に閉鎖されたトンネルが現れました。下府を出て最初のトンネルだった上府第一トンネルです。横の県道が完成する前は市道として使われ、車が譲り合いながら走行していたそうです。
14:02 国府公民館宇野分館に到着。平成22年に閉校になった旧浜田市立宇野小学校で、校舎は明治40(1907)年に建てられたものを増築して使っていたようです。
近くには他に古い建物が残っていました。
宇野の集落を過ぎて山間に入ってしばらくすると県道沿いに橋脚とトンネルが現れます。奥のトンネルは有福第三トンネル。一度も使われることなく80年もの間朽ち続けているというのが何とも無念です。トンネルを抜けたところにも橋脚が1基残っています。
さらに同じ道を進んでいくと橋脚群が現れます。今福線旧線区間では最長の橋梁で、下から見上げても圧巻ですが、路盤と同じ高さの展望台からも見ることができます。上の写真を撮ったところから振り返ると今福第一トンネルがあります。
そこからさらに進むと五連アーチ橋が現れます。とは言っても県道に転用されているので県道から直接その姿を確認することはできません。コンクリートの白いアーチ橋の姿は士幌線を彷彿とさせますが、よく考えたら建設されたのは同年代でしたね。
今福第三トンネルを抜けると四連アーチ橋。下府川を跨ぐ美しいプロポーションの橋で、障害物が少ないので撮りやすいです。平成20年10月に土木学会認定選奨土木遺産に認定されています。
今福第五トンネルは線内のトンネルの中で唯一活用されており、トンネル内の横穴にJR西日本の地震計が設置されています。もちろん閉鎖されているのでフェンスの間から撮影。後から補修した跡が見て取れます。
一気に山を抜けて旧那賀郡金城町にある今福の集落近くへ。ここには鉄建公団によって建設された新線の下長屋トンネルが残っています。トンネルからは真新しい轍が続いていましたが、果たして誰が何のために通ったのでしょうか。
下長屋トンネルからは岩見今福方面へと一直線に続く新線の路盤が残っています。
奥の方で右からやってきた旧線跡と合流して石見今福駅に至っていたはずですが、事前の調査不足で見損ねました。
金城町今福からさらに山を越えて旭町の中心地・今市へ。道中、右手に公団建設線らしい橋梁が見えましたが停まれなかったので帰りに見ることにしてそのまま進みました。
旭町今市は浜田から山また山を越えた辺鄙なところにあるとは思えないほどしっかりした街で、規模こそ小さいものの市街地が形成されています。浜田市役所の支所に転用された旧役場は昭和37年に建てられた古いものですが、耐震工事中なのであと数十年は残りそうです。役場に隣接して建つ旭山村開発旭センターもなかなか見ごたえのある建物でした。雪で歩行が困難だったのと時間の都合であまりゆっくりと見れなかったのが心残りです。
今市からさらに山間へ。脇道に入ると一気に雪が深くなりました。車の床下から聞こえる雪と接触するガリガリという音を聞きながら旧和田郵便局へ。現在は空き家のようですが、郵便局時代の姿をよく残しています。
さらに山深く、県境に近い市木地区の旧酒井医院で折り返してまた日本海側へと戻ります。昭和11年に建てられたもので、空き家となって久しいのか朽ち始めています。
一気に戻り、金城から旭へ抜ける途中に見損ねた白角橋梁と寺廻橋梁へ。今福から先も多少は着工されていたようですが、今福までの区間ほど工事も進まなかったようで残っている遺構自体もそれほど多くありません。
今福まで戻り、コンビニに車を停めてその近くの今福橋梁へ。場所的には下長屋トンネルから続く路盤の延長線上で、橋梁を渡ると路盤は県道に取り込まれて石見今福駅予定地に至ります。17時半前といい時間になったので今日はここで打ち止め。見れてない遺構が多くあるのでいずれ未成線を辿るツアーにでも参加して残りも見てみたいものです。
この日の宿は益田駅前の駅前ビジネスホテル。二人で一泊5500円とリーズナブル。駐車場の場所が分かりにくいのが難点ですが、益田駅を出て30秒ほどの立地なので車旅よりは列車旅向きの宿でしょう。山陰本線や山口線の駅を巡る時には重宝しそうです。