まだ見ぬ駅を求めて~逆瀬の駅巡り旅~

駅巡りの記録をひたすら載せていくブログです。やたら更新する時と全く更新しないときがあります。

12/15 粉雪の因美線駅めぐり

日本全国に大寒波が押し寄せたこの日は雪の降る鳥取で駅めぐりをしてきました。

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ルミナス号

バスタ新宿を前日21:30に出る下津井電鉄高速バスルミナス号に乗り、早朝5:48に津山駅に到着。乗客が少なかったので、他の人から離れた席にしてもらうことができ、後ろに誰もいなかったのでリクライニングを最大限倒して熟睡することができましたが、あまりの乗客の少なさに今後が心配になってしまいます。乗務員さんはとても親切で、わずかな乗客のためにもとても丁寧で詳細な放送をしてくれました

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早朝の津山駅

到着した津山駅は、津山線姫新線因美線が乗り入れる岡山県北部最大の駅。大きな木造駅舎が残っていますが、屋根が邪魔なのと暗いのとでよく分かりません。

乗車予定の因美線の次の列車は6:47なので、まだ一時間も時間があります。時刻表で見たところ、姫新線で一駅降りれそうだったので、ひとまず姫新線に乗車します。

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院庄駅

津山6:11発普通新見行き855D(キハ120-355+キハ120-353)で院庄へ。津山市の郊外にある駅で、大正12年8月開業時の木造駅舎が残っていますが、半分化されています。

空は明るくなりかけていますが、駅舎はシルエットが浮かぶばかりで、明かりの当たっていない部分はどのような感じなのかよく分かりません。本数的に車で来ることになりそうですが、また明るい時間に撮り直したいところです。

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雪を被った知和駅

院庄6:38発普通津山行き1850D(キハ47-43+キハ47-1004)で津山に戻り、6:47発普通智頭行き676D(キハ120-338)に乗り換えて智頭へ。

美作滝尾では田んぼに霜が降りている程度だったのが、三浦では淡い粉雪が舞うようになり、美作加茂では枕木が白くなる程度の積雪、そして県境に向けて高度を増すにつれて車窓の雪も多くなってきます。知和まで来るとすっかり銀世界と言う趣でした。

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智頭駅

一時間ほどで終点智頭に到着。美作加茂から先は那岐まで他に乗客が無く、県境区間の需要の少なさを思い知らされます。

智頭急行との接続駅である智頭駅は八頭郡智頭町の玄関口で、特急も全列車が停車します。智頭~鳥取間は因美線も特急が走ってそれなりに賑やかですが、智頭以南では特急は智頭急行を経由してしまうので、中国地方でも屈指の閑散路線となり、5時間近く列車がない時間帯もあります。智頭駅は御覧の通り雪の中で、雪が滅多に積もらない地域で育った身としてはテンションが上がります。

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鷹狩駅

智頭8:30発普通鳥取行き656D(キハ47-1025+キハ47-37+キハ47-3013+キハ47-1053)で鷹狩へ。用瀬町の国道沿いにある駅で、開業は昭和36年8月。開業時からのブロック造待合室がホーム上にあります。次の列車までは約一時間半、生憎長靴を持ってきてはいませんが、隣の用瀬駅まで雪中行軍します。

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用瀬の街並み

鷹狩駅を出てから15分ほどで用瀬の市街地へ。駅へ向かう前に市街地をひと廻りしていきます。平成16年に鳥取市編入された旧八頭郡用瀬町は「流しびなの里」として知られる町で、中心部には古くからの建物が多く残っています。重伝建のような整った街並みではなく、新旧の建物が入り乱れていますが、そんな自然な感じの街並みが雪を被っているのもまたいいものです。

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用瀬駅

用瀬駅の駅舎は大正8年12月20日に因美軽便線の終着駅として開業した際に建てられたもので、旧事務室にはシルバー人材センターが入居しています。今日(記事執筆日)でちょうど開業101年を迎える古い駅舎ですが、改修されつつ大事に使われている様子が見て取れます。これからも用瀬町の玄関として大事にしていってもらいたいものです。

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国英駅

用瀬10:24発普通鳥取行き731D(HOT3503)で国英へ。平成16年に鳥取市編入された旧八頭郡河原町の駅で、駅名は昭和30年の河原町成立まで存在した旧国英村に由来します。駅舎は用瀬と同じく、因美軽便線の駅として開業した大正8年12月に建てられたもの。旧事務室分が撤去されて左右対称のコンパクトな姿になっています。あまりに自然な感じの仕上げなので、もはやどちら側に事務室があったのかすらよく分かりません。駅舎の隣の木は果たしていつ頃植えられたものなのでしょうか。

つげ義春氏の漫画が原作の平成15年の映画「リアリズムの宿」の冒頭シーンに国英駅が登場するそうで、ネットにもその画像が上がっていますが、17年も前だというのにあまり今の駅と変わらないですね。

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河原駅

5分遅れてやってきた国英11:11発普通鳥取行き634D(HOT3504+HOT3505)で河原へ。駅名は平成16年に鳥取市編入された旧八頭郡河原町に由来しますが、駅自体は隣の八頭町にあります。駅舎は一見古くからの木造駅舎のように見えますが、昭和52年の火災で旧駅舎が消失した後に地元で建てたものだそうで、よく見てみると古くからの木造駅舎とは各部の造りが違っています。昭和50年代の建物なら普通はコンクリートになりそうなものですが、おそらくは地元で建てるとなった時にコンクリートでは費用が掛かるからと言ったことではないかといった事情があったのではないかと推測できます。(もし違っていたらごめんなさい)

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因幡社駅

4分遅れの河原11:25発普通上郡行き633D(HOT3503)で因幡社へ。大正12年6月の因美線智頭延伸の際に開業した駅で、駅名は昭和30年の用瀬町成立まで存在した旧八頭郡社村に由来します。駅舎は開業時に建てられたもので、事務室部分には理髪店が入居しています。理髪店の方が簡易委託の窓口で切符を売っているそうですが、昼休みなのか不在でした。駅舎から少し離れて建つ便所も開業時からのものですが、理髪店の方の清掃のおかげか、古いけれども汚くはありませんでした。

次の列車を待つ間も雪はしんしんと降り積もります。思わず「名前も知らない駅の ホームで雪を見ている・・・」と浪漫鉄道<蹉跌篇>の歌詞が頭に浮かびました。


浪漫鉄道<蹉跌篇> 谷村新司 Shinji Tanimura

まあ名前を知らない駅もなにも駅名知った上で降りてるんですけどね(笑)

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知和駅

因幡社12:40発普通智頭行き635D(HOT3505+HOT3504)と智頭12:54発普通津山行き677D(キハ120-338)を乗り継いで県境を越え、知和で下車。木造駅舎の宝庫・因美線でも屈指の木造駅舎が残る駅です。駅舎は昭和6年9月に因美南線の駅として開業した際に建てられたもので、板張りの外壁と木枠のままの窓が近代化される前の駅の姿を今に伝えています。惜しむらくはせっかく残っている木製引き戸が固定されてしまっていることで、引き戸を閉めて撮れないのが残念なのはもちろんのこと、風が駅舎内に強く吹き込んできてとても寒く冬場は列車を待てる環境ではありません。また、固定された引き戸の隙間に虫の死骸が溜まっていて美観上もよろしくありません。

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知和駅 駅舎内

素晴らしいのは外観だけではありません。無人化されるとほとんどの場合、窓口に板が打ちつけられたり固められたりしてしまうものですが、この駅の場合は窓口からチッキ台、改札ラッチに至るまで昔の姿を留めた美しい状態で残されています。

旧事務室内も美しい状態が保たれているようですが、残念ながら方谷駅のように普段から入ることはできないようです。世界遺産にしてもいいくらいの素晴らしい駅舎だと思いますが、方谷駅とどちらが素晴らしいかと聞かれたら、私は僅差で方谷駅の方が上だと答えます。引き戸さえ閉めれるなら逆転で知和駅が勝つと思いますが。ちなみにその方谷駅も所在地は同じ岡山県です。

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駅前通りから知和駅を望む

次の列車までは2時間弱、予定では隣の美作加茂まで歩く予定でしたが、あまりに駅舎が素晴らしくもっと見ていたいのと、雪がないとはいえこの寒さの中を歩きたくないのとで、次の列車まで滞在することにしました。

駅前に人家は多いとは言えませんが、駅前の目立つところに立派な民家があって、他にもちらほら建物があるので、「秘境駅」だとは思いませんでした。牛山さんもこの良い駅舎を紹介したかったのでしょうが、このレベルの駅まで秘境駅の括りに入れるのはちょっと秘境駅を大安売りしすぎなのではないかという感が否めません。列車での到達難易度はなかなかのものですが。

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土師駅

知和15:12発普通智頭行き680D(キハ120-338)で土師へ。昭和10年に智頭町に編入された旧八頭郡土師村の駅で、昭和7年7月に因美線最後の開業区間である美作河井~智頭間開業時に開設されました。かつてあった木造駅舎は平成13年2月に改築されて簡素な待合所に替わりました。締め切り不可で、この時期に列車を待つには辛そうですが、因美線の利用者数の少なさを見るに仕方のない面はあるのでしょう。

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那岐駅

粉雪舞う中を40分ほど歩いて隣の那岐へ。県境の鳥取県側にある駅で、朝に一往復だけ折り返し列車が設定されています。駅舎は昭和7年7月開業時のもので、旧事務室部分は改装されて月2回のみ診療所として使用されています。

駅名の由来は岡山県との県境に聳える那岐山で、昭和10年に智頭町に編入されるまで所在地は旧八頭郡那岐村でした。漢字は違うものの、県境を越えたところには勝田郡奈義町があります。

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那岐駅 ホームへの階段

相対式ホームは駅舎より一段高い所にあり、豪雪地帯らしく木製の屋根付き階段で結ばれています。雰囲気は満点ですが、明かりが点灯していなかったので薄暗かったです。

同じような屋根付き階段のある上越線上牧駅の場合は途中で反対ホームへの地下通路が分岐していましたが、那岐駅の場合はそんなものはなく、登りきって一旦ホームに出てから構内踏切を渡ることになります。おそらく列車の通過量の違いによるものでしょうね。

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美作河井駅

那岐16:41発普通津山行き681D(キハ120-338)で美作河井へ。県境の岡山県側にある駅で、昭和6年に因美南線の終着駅として開業しましたが、翌年早くも県境区間が開通して途中駅となっています。駅は集落から離れた高台にあり知和よりも人家が少ないのではないかと思える立地です。平成30年の1日平均乗車人員はわずか12人。そんな利用者の少ない駅ですが、智頭急行線開業前は因美線自体が岡山と鳥取を結ぶ主要路線で、列車の交換も行われていたため、駅員さんが配置されていました。

駅舎は開業時のもので、知和と同じく窓口が良い状態で残っていますが、遅くまで有人駅だったためか窓や引き戸がアルミサッシになるなど近代化されています。

ちなみに「鉄子の旅」でおなじみの横見浩彦さんが平成7年10月29日に全駅下車を達成した駅でもあります。それ以前から駅めぐりをしていた人はいたものの、これ以降の横見さんのメディア露出がきっかけとなって駅を巡る人が増えたという面は否定できないでしょう。かく言う私も駅めぐりをするようになったのは横見さんの本がきっかけの一つです。

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雪の積もった鳥取駅前

17:22発普通智頭行き684D(キハ120-359)で美作河井を後にし、智頭で18:16発普通鳥取行き745D(HOT3606+HOT3502)に乗り換えて鳥取へ。この日は鳥取駅前のホテルに宿泊しましたが、ホテルまでのわずかな距離でも雪の多さに難儀しました。翌日はさらに激しい雪に見舞われることになるのですが・・・